2017年1月29日日曜日

ぼくがコーヒー豆を買い付けに行く理由

コーヒー豆を自分で産地まで買いに行こう、と最初に思ったのは、驚くかも知れませんが、僕がコーヒー屋を目指すよりも「前」のことでした。

それまで、バックパッカーとして海外を転々としていた僕は、「日本と海外を行き来できる仕事がしたいなあ」と漠然と考えていました。

ある時、コーヒーの産地のほとんどが中南米やアフリカだと知り、
「それなら、コーヒー屋をすればコーヒー豆の買い付けを理由に海外に行けるぜい」という安易な発想から、コーヒー屋を目指すことになります。

その後、なんの幸運だかコーヒーの経験がゼロだったのにハニー珈琲で働かせてもらえることになりました。

ハニー珈琲で働き始めて3年近くが経ち、コーヒーについての知識と理解が深まってきた時、「産地を訪問したい」という想いが強くなってきました。

また、その理由も当初よりもはっきりとした輪郭を持つようになっていきました。



コーヒーを知るには、抽出、焙煎だけじゃなく、“農産物”としてのコーヒーにも目を向けなければ。
本来、赤いフルーツであるコーヒーが、どのように作られ、どのような人たちによって、職場でいつも見ている、この「生豆」へと変わるのか。
その過程をこの眼で実際に見て、いつか開く自分のお店に来てくれる人たちに伝えたい。

生産者と消費者の距離をもっと縮めたい。

コーヒーとは、生産者と焙煎人の共同創作物なんだ。
いや、もっと言えば、自然と人間の共同創作物だ。

こんなに人に感動や驚きを与えることのできる「コーヒー」が、カップに届くまでの全てのプロセスを、体感を持って知りたい。そして、伝えていきたい。

                                       』

こんな想いが、溢れ出てきました。
そして2012年に僕はハニー珈琲を退職し、中南米へ渡ります。

その時の想いは今にいたるまで全くぶれることなく、決して消えない炎のように、静かに、しかし力強く心の中に燃え続けています。

直接買い付けにいくことは、決して生豆の原価を下げることに繋がるわけではありません。
むしろ、少量しか買わないのであれば、渡航費や現地での旅費なども考えると、原価は上がってしまうでしょう。

しかも、現地では美味しいと思って買ったものが、いざ届くと味が変わっていたり(1年分買ったのに・・・)。そんなリスクもあります。

まあ、あまり経営上効率的とは言いがたく(笑)。

それでも、産地まで足を運ぶことを、やはり僕はこれからもやめないだろうと思います。

ではコスタリカに行ってきます!

















2017年1月22日日曜日

コスタリカへ買い付け出張

開業前に、勉強のため中南米のコーヒー農園を見て回っていました。
グァテマラ、ニカラグア、コスタリカ、コロンビア。
どの国もそれぞれ違って面白く、本当にいい経験をさせてもらいました。

その中で、一番長く滞在したのがコスタリカでした。

首都サンホセに30年以上住んでいる日本人の女性と偶然知り合い(このおばちゃんがかなりぶっ飛んでいて面白いんですが)、コーヒー農園を一緒に見て回ったり、ファーマーズマーケットの手伝いをしたり、何故かヨガを習ったり、何故か発酵食品の作り方を教えてもらったり、何故か一緒に自家菜園の畑仕事をお手伝いしたり・・・色々お世話してもらって。


「日本に帰ってお店を出したら、最初の豆の買い付けはコスタリカだな」
と帰りの飛行機でひっそり考えていました。

それから3年以上が経ち。

ようやく、その時の想いが実りました!

スタッフのタツヤさんにお店を任せて、2月1日から1週間、コスタリカにコーヒーの買い付けに行ってきます。

ちなみにどうして今回1週間かというと、BASKING COFFEEは実は、「焙煎してから10日以上経ったコーヒー豆は店頭販売しない」というルールを作っています。
鮮度は、品質に非常に影響を与えますからね。
それを考えると、現在のところBASKING COFFEEのコーヒー豆は僕がすべて焙煎している為、1週間以上お店を離れるのは難しいのです。

ということで、そんなに時間がたっぷりあるというわけではありませんが、スケジュールをできる限りタイトにして、生豆の選定に集中したいと思っています。(遊びたいのを我慢して)

また、生豆を買い付けるだけでなく、コーヒー生産者としっかり話をしたり、できるだけ多くの農園を視察して、たくさんのことを学んで来ようと思います。

帰国したら、皆様にも産地報告会を開いて、情報を共有していけたらと考えています。

なんだかすごくわくわくしてきましたよ(笑)。

忘れかけてたスペイン語をまた勉強しておこうっと。


(写真は開業前に行ったコスタリカにて)



↑首都、サンホセで開かれるファーマーズマーケットでの一枚。先述の日本人の方は、自分の畑で育てた無農薬の野菜を発酵食品にしてここで出展して販売していました。




↑コーヒーエキスポーターのところで、たくさんのコーヒーをカッピングしたり、写真のようにサンプルローストさせてもらいました。




↑首都サンホセ。コスタリカは中米の中でも治安は良い方です。




↑農園で働く女性。麻袋に詰める前に欠点豆を取り除く作業をしています。もの凄いスピードでされていました。




↑コーヒー農園。この木々は、まだ収穫ができるほどに大きくなってはいません。
コーヒーが育つ土地は気候がやっぱり気持ちいい!


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2017年1月20日金曜日

コーヒー哲学序説

寺田寅彦さんの「コーヒー哲学序説」というエッセイが結構面白いです。

今では、良質なコーヒー豆が手に入りやすくなって、有り難いことに美味しいコーヒーを飲めるのが当たり前になってきました。(本当に有り難いことです)

この本は昭和初期に書かれたものですから、コーヒーの味だとかコーヒーに対する見方などは、今とは全然違うのだろうなあ、と想像していたのですが、意外にも共感できるところや納得してしまうところが多くて、興味深く読めました。

以下引用です。

始めて飲んだ牛乳はやはり飲みにくい「おくすり」であったらしい。それを飲みやすくするために医者はこれに少量のコーヒーを配剤することを忘れなかった。粉にしたコーヒーをさらし木綿もめんの小袋にほんのひとつまみちょっぴり入れたのを熱い牛乳の中に浸して、漢方の風邪薬かぜぐすりのように振り出し絞り出すのである。


牛乳が「薬」として飲まれていたことも驚きですが、それにコーヒーを含ませて飲まされたのが寺田寅彦さんがコーヒーにのめり込むきっかけだったのも面白い。


自分がコーヒーを飲むのは、どうもコーヒーを飲むためにコーヒーを飲むのではないように思われる。(中略)
コーヒーの味はコーヒーによって呼び出される幻想曲の味であって、それを呼び出すためにはやはり適当な伴奏もしくは前奏が必要であるらしい。銀とクリスタルガラスとの閃光せんこうのアルペジオは確かにそういう管弦楽の一部員の役目をつとめるものであろう。


巧みな文章ですね(笑)。
僕たちはコーヒーをコーヒーそのものの味だけでなく、シチュエーションや気分も含めてコーヒーを体験していますよね。

コーヒー店を営業する僕たちは、コーヒーの味はもちろん、お店に立つ人、お店の雰囲気、そこで流れる音楽、そういったものも大切にしたいものです。


研究している仕事が行き詰まってしまってどうにもならないような時に、前記の意味でのコーヒーを飲む。コーヒー茶わんの縁がまさにくちびると相触れようとする瞬間にぱっと頭の中に一道の光が流れ込むような気がすると同時に、やすやすと解決の手掛かりを思いつくことがしばしばあるようである。
 こういう現象はもしやコーヒー中毒の症状ではないかと思ってみたことがある


僕もこういうときよくあります。
頭を抱えて思考が渦巻いているときは答えが出なくて、コーヒーを口に含んだ瞬間、あっと突然ひらめくとき。(あとお風呂に浸かっているときとかも)

このように、コーヒーについての洞察が鋭くて、自分もぼんやりと感じていることを的確に言葉にされているのを見ると心地良さを感じます。


芸術でも哲学でも宗教でも、それが人間の人間としての顕在的実践的な活動の原動力としてはたらくときにはじめて現実的の意義があり価値があるのではないかと思うが、そういう意味から言えば自分にとってはマーブルの卓上におかれた一杯のコーヒーは自分のための哲学であり宗教であり芸術であると言ってもいいかもしれない。これによって自分の本然の仕事がいくぶんでも能率を上げることができれば、少なくも自身にとっては下手へたな芸術や半熟の哲学や生ぬるい宗教よりもプラグマティックなものである。


確かに、その人にとって活動の原動力となりうるものが芸術や哲学や宗教といったたいそうなものではなく、身近で安価なコーヒーであるならば、それはそれで幸福なことだと思えます。


***


このエッセイを読み終えたあと、BASKING COFFEEのコーヒーが、もしくはBASKING COFFEEという存在が、人びとの「活動の原動力」となることがあるとすれば、僕にとってそれ以上の幸せなことはないなーって思いました。

こちらの「コーヒー哲学序説」、短いエッセイですので、ご興味ある方はぜひ読んでみてください。


おしまい

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2017年1月11日水曜日

フレンチプレスの淹れ方

さて今日は、BASKING 流のフレンチプレスの淹れ方を説明して行きたいと思います。
フレンチプレスとは、







こんなやつです。結構、昔のヨーロッパの映画とか観てると出てきますよね。
フィルターの部分が金属のメッシュになっているので、豆本来の味がストレートに出せる器具です。

美味しいコーヒー豆があるなら、しっかりと旨味を引き出せるこのフレンチプレスがおすすめなんですが、不味いコーヒーを使ってしまうと、その不味さもそのままストレートに出してしまうので、「良質な豆」を使うのが前提になります。


まず必要な物!






ケトル、スケール、コーヒー豆、メジャースプーン、タイマー。
こんなものですかね。ケトルはどんなタイプのものでも構いません。

では、始めにお湯を湧かしている間に、コーヒー豆をスケールで計る。
今回は、40gの豆で淹れてみますね。

追記:フレンチプレスの豆とお湯の分量は1杯あたり豆10gに対しお湯180ccを目安。
2杯分だと20gに対し360cc。それぞれ倍にしていくだけでいいです。






キチッとスケールでグラム数を計るのがポイント。
計ったら、ミルで挽きます。







挽き目を説明するのが難しいのですが、グラニュー糖くらいの大きさかな。
原則的に、同じ粉量であれば挽き目が粗くなれば味は薄くなり、細かくなれば濃くなっていきます。

なので一度淹れてみて、あとは自分の好みの濃さに調整していくのがいいかと思います。








 フレンチプレスのガラスをお湯で一度リンスしましょう。
冬などはこのガラスが冷たくなってしまって、お湯の温度が下がってしまいますのでね。

その後、挽いた粉を入れて、お湯を注いで行きます。
お湯が粉に触れたら、4分にセットしたタイマーをONに。
お湯の温度は、当店は95℃ですが、ご自宅で淹れる際はお湯を沸騰させたらケトルを一休みさせてから注ぐ感じで大丈夫です。

フレンチプレスを傾けてお湯をガラスに伝わせていきます。
そうすることで、粉がうまく撹拌されて粉全体にお湯が行き渡っていきやすくなります。






 お湯の総量の半分弱くらいお湯を入れたら30秒待ちます。(蒸らし)
今回は720cc入れるので283cc入れました。まあ、この時はそこまできちっとしなくて大丈夫です。(おおざっぱでごめんなさい)

「なんで蒸らすの?」
とよく聞かれますが、
理屈としてはおそらく、“少ない湯によってコーヒーの成分が「開き」、旨味が引き出されやすい状態になった”ということではないしょうか。

・・・この部分以外のところでも言えることですが、理屈はあくまで理屈で、「そんな気がする!」という想像力と、「実際に蒸らしたときの方が美味しかった」という経験が大事な気がしています。






30秒経ったら、720ccまでお湯を注いでいきます。
結構勢いよくお湯を入れる方が美味しくなります。






あとはタイマーが鳴るのを待つのみ。
この間、「おいしくなあれ、おいしくなあれ」と唱えててもいいです。






タイマーが鳴りましたら、プランジャーを下まで押し下げます。






 あらかじめ温めておいたカップに直接注ぎます。
当店ではこの編み目の細かい茶漉しで微粉を濾していきます。
(この茶漉しは「タタミ織り茶漉し」と言うそうです。微粉が気になる方にはおすすめ)






 出し切るのではなく、最後は少し残してあげると、よりクリーンな味わいになります。
この残った部分だけを飲むと、けっこう雑味を感じます。









出来上がり!!

コーヒーは、時間と共に味が変わっていきます。
良質なスペシャルティコーヒーの場合、50℃くらいになると、甘みや質感をより強く感じたり、最初は感じなかったフレーバーが出てきたりして、一杯のコーヒーの中で色々な発見があります。

どうぞゆっくりと時間をかけてその豆にしかない味わいを楽しんでください(きりっ)。


いかがでしたでしょうか。
ご覧頂けたように、フレンチプレスはとても簡単です。

だけど不思議なことに、淹れる人によって味がそれぞれ違うのです。

そう言えば子どものときに、父親が急須でお茶を淹れてくれたことがあったのですが、母親が淹れたお茶と全然違くて(笑)。

コーヒーも同じようなところが、もしかしたらあるのかも(?)知れません。

そんな不思議なところもコーヒーの魅力ということで、毎回の自分で淹れたコーヒーを楽しみましょう。

おしまい

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2017年1月8日日曜日

「hilosweets」さんとのイベント





Facebookにもアップしましたが、こちらでも同じ内容ですが告知しておきます。

これまでBASKING COFFEEに焼き菓子を提供してくださっていた、「hilosweets」さんの焼き菓子ですが、お召し上がり頂けるのが、2月中旬までとなりました。

hilosweetsの店主であるヒロコさんがご結婚をされることとなり、生活拠点を関東へと移されるためです。彼女の焼き菓子は本当に美味しくてファンも多かっただけに、非常に残念ですね・・・。

ですが、これはおめでたいことですからね、笑ってお見送りしたい。
ということで、hilosweetsヒロコさんのお別れ会も兼ね、最後に焼き菓子の食べつくし会を計画しました。

題して・・・

Sunday Fika
             〜『hilosweets』の焼き菓子をコーヒーとともに食べまくる会〜


プレートに好きな種類のお菓子を好きなだけ載せるバイキング式(コーヒーおかわり自由)です。気が済むまで載せてください(笑)。

この日はヒロコさんも店頭に立ってくれます。
ヒロコさんともお話しながら、最後にhilosweetsの美味しい焼き菓子を食べ納めしましょう!

日時:2月12日(日)

1部 15:00〜16:30

2部 16:30〜18:00
(予約制)

場所: BASKING COFFEE

料金: 2500円

ご予約は店頭もしくはお電話にて承ります(092-682-5515 榎原)
※予約期間は1月8日から2月7日までとさせて頂きます。

ご予約お待ちしております !



2017年1月7日土曜日

1月のコーヒーセミナーの日程

今月は2つやります!

①コーヒー教室〜基本編〜





日時
1月22日(日) 11:00〜12:30(くらい)
 
定員
 8名
受講料  1500円(コーヒー豆100gのお土産付きです!)


〜内容〜
◎スペシャルティコーヒーや産地についてのお話
◎コーヒーの品質や淹れ方による違いの飲み比べ
◎ご家庭でコーヒーを美味しく淹れるこつ(フレンチプレス)

店主の中米農園滞在時の話も交えて色々とお話します!

②焙煎見学


日時
1月25日(水) 11:00〜12:30

定員
3名
料金  1500円(コーヒー豆50gプレゼント)

〜内容〜
実際に焙煎をしているところを見学していただきます。
生豆の匂いを手に取って感じたり、豆に火が入って行く様子を説明を交えながら見て頂きます。
コーヒーが出来上がる行程を体感できるめったにない機会です。

焙煎後は焙煎した豆(2種類焼きます)を一緒にカッピングしてディスカッション。
焙煎したばかりの2種類のうちお好きな豆を50gお持ち帰り頂きます。

お申込みは店頭、お電話、またはfacebookのメッセージよりお願いします。
また、お申込みの際は①コーヒー教室〜基本編〜か②焙煎見学のどちらかを明記くださいますようお願いします。
092-682-5515 榎原


2017年1月6日金曜日

あけましておめでとうございます。

さて2017年ですね。

毎年お正月には、「自分の抱負」と「BASKING COFFEEの抱負」をノートに書き綴るのが恒例になっています。
どっちも恥ずかしいので秘密にしておきますが。(笑)

目標や夢は、「言葉にすれば叶うよ」とよく耳にしますが、僕はどちらかと言うと、そういうのはひっそりと抱いていたい。
で、こっそり叶えてるっていうのが、何だか粋な気がして。

それはそうと、今年もお正月から登山してきました。


鹿児島にある開聞岳という山。
ぎり1000m行かない程度の山ですが、山頂の景色は360℃パノラマビューで、素晴らしかったです。下山したあと、指宿の温泉で疲れを癒しました。

***

皆さんにもお勧めしたいのが、山頂でのコーヒー。
僕もはじめのうちは、荷物になるから前もって作っておいたコーヒーを水筒に入れて持って行ってました。
それが一度、山頂でミルで豆を挽いて、エアロプレスで淹れて飲んでみたら、感動するような旨さで。



計りは持って行ってなかったので、なんとなくの目分量で淹れたのですが、自然の中ってのは、そんなもの軽く超越してしまうのでしょうね。
本当、身体にしっかりと染み渡っていくような美味しさでした。

エアロプレスだと軽量だし、後片付けも簡単だからアウトドアコーヒーにも向いていると思います。

山頂でなくてもいいから、ぜひ一度自然の中でコーヒーを挽いて、淹れて、飲んでみてください。
好きな人と食べるご飯は美味しいように、シチュエーションって、大きくその「時間」に影響を与えますよね。
お金のかからない贅沢だなぁ、って思います。

・・・ちなみに、先日の開聞岳では器具を忘れて、コーヒー飲めなかったんですけど。